フェルデンクライス・メソッドとは?
日本ではまだ広く知られていませんが、欧米ではかなりメジャーなメソッドです。体の動きを使った脳の学びのメソッド。人間は如何に学習するかを、動きを通して学ぶメソッドでもあります。
Q 体操やトレーニングとどこが違うの?
トレーナーの指導や模倣で、体(特に外壁)を鍛えていく運動とは、本質的に異なります。ある目的のために、全ての人が同じ体づくりをするのではありません。むしろ反対。個人、個性を大切にします。頑張らず、ゆっくり、小さく、楽に動いてゆくと、体の動きや各部分への連動、そして変化に気づけます。そう、自分の体が自然にやってくれていることに気づく。この「気づき」が脳へ伝わりスイッチオン。さらに活性化して働きだします。そして心地よいアップグレードした動きを見つけ出します。これが人間の改善・上達の学びのメソッドです。
~不可能を可能に、可能を容易に、容易を優雅に~
Q 何故脳の学びが必要なの?
人間の動きの殆ど全て、脳が指令を出します。動きは脳が創ります。筋トレが流行っていますが、筋肉は唯の実行役。動きの質を上げ、楽で、簡単で、優雅な動きになる(改善・上達する)には、脳の学びが必要です。人間の優れた能力は、この学びです(学校教育ではなく)。私たちの遠い祖先が絶滅しなかったのも、こうして進化したからです(私たちの脳辺縁系にはこの記憶が遺されています)。フェルデンクライス・メソッドは、脳―神経系―骨格(時に筋肉も)、そして呼吸、重力、そして心やフィーリングなど人間の全てを参加させたメソッドです。2000にも及ぶ体のレッスンは、人類が獲得し、脳に眠る動きのパターンに気づけるための方法です。何だか難しそうですが、やさしい動きなので、何歳でも、痛みや障害があってもできます。赤ちゃんのように、動きを楽しみながら学ぶオーガニック・ラーニング(有機的学び)のメソッドです。
Q メソッドはどのように生まれたの?
イスラエルの創始者は、イスラエルの物理学者モーシェ・フェルデンクライス博士。パリのソルボンヌ大学で物理学を学び、ジュリオ・キューリー研究所で原子物理学を研究。ヨーロッパ初の黒帯取得者(パリで嘉納治五郎の指導を受ける)。第2次世界大戦の兵役とサッカーなどのスポーツで痛めた膝が悪化、一生車椅子と宣告されるも、自ら治すこと決意。あらゆる医学、人間科学(脳神経学、骨格学、生理学、心理学)の研究に柔道、ヨガ等も加え、広範な研究と知識で、2年後に完治させた。そのプロセスで生まれたのが、フェルデンクライス・メソッド。多くの治癒希望者が押し寄せたため、物理学を断念しこのメソッドと供に歩むことを決断する。1940年代に一つの体系化されたメソッドとして確立。以来、ヨーロッパをはじめ北米・南米・オーストラリア、日本、韓国、中国へと広がっている。
Q どんな効果が?
音楽、芸術、ダンス、スポーツなどの専門や趣味の改善上達。体の痛みや不調の改善。障害者の機能回復、認知症予防など。教育・芸術・医療など幅広い分野で評価され、現在では日本を含め世界で活用されている。特にドイツではメジャーなメソッドで、音大ではカリキュラムに取り入れられている。
逸話~世界的バイオリニストのメニューインが、シーソーに乗せられてバイオリンを弾き、イスラエル首相が逆立ちをさせられた!?
ZOOMを使ってステイホームで出来ます
嬉しい事に、長引くコロナ禍でも、このフェルデンクライス・メソッドはZOOM でできます。ヨーロッパを起点に世界中の方々が参加するセグメントが開催中です(2021年8月現在)。
私もZOOM教室を2つ持っていて、ステイホームでできるので参加者にも喜ばれています(グループレッスン)。個人レッスンでは、脳梗塞の高齢者の方が発防止と機能回復のために毎週続けています。フェルデンクライスは脳の機能もUPさせます。また楽器奏者の方の演奏機能改善を続けています。皆さん、楽しみながら、新しい可能性を探索され、少しずつ成果を感じていらっしゃいます。
フェルデンクライス・体のレッスン(ATM*)体験者のご感想
<フェルデンクライスに出会って〜2人のプラクティショナーの思い>
◎ 脳の気づきを得ることでプラスの変化が生じる
フェルデンクライスに出会って、仕事や日常生活、そして人間関係など、多くのことが変わってきました。難しい曲に出会ったときの練習の仕方も。ゆっくり音を聴き音楽を感じることで効果的な練習ができるようになり、自分の無駄な頑張りにも気づくことができました。
この気づきは、生徒へのレッスンに生かすことができ、生徒に上達を促す教え方ができるようになりました。音楽だけでなく、日常の生活の中でも、いろいろなことに気づけ、以前より自分の可能性を見出せるように思う。まだ成長していける種があることを感じています。
人生をもっと楽しく、充実したいと思う人に、このメソッドはその第一歩になるでしょう。(管楽器奏者)
◎ 体と心の調子が良くなると、物事への向き合い方が変わる
フェルデンクライスを始めたきっかけは若いころの背骨の怪我。酷い痛みで整体、鍼理療をしていた時、このメソッドのレッスンを受けました。最初の1回で、辛かった痛みがすごく楽になり、驚きました。それ以来、この体のレッスンを続けました。体調がよくなり、仕事にも大変役立ち、精神的にも穏やかになり。心と体はひとつなのを実感しました。ある方向へ導くのではなく、それぞれの個性を大切にするという考え方、学び方が身についたからかもしれません。このメソッドとの出会いは、私にとっての人生の宝物です。(医療関係)
<フェルデンクライス・体のレッスン(ATM*)〜参加者からのご感想>
Mさん (芸大声楽科卒) 50代
昨日はありがとうございました。(^0^)
とてもよくほぐれて、全身に血が巡るのが感じられ、全身に一体感があると感じました。例えば、腕を動かしたら全身にその影響がこだまのように響くといった風に。
声も楽に出て、少し強弱をつけて歌うことができました。呼吸、気道、脱力がとても大事だとあらためて思います。
Iさん (芸大大学院修了、中学非常勤講師) 40代
昨日はありがとうございました!
意識と無意識、は新しい発見でした。頑張らないでと言われるまで、一生懸命頭使ってガチガチになって口を結んでました。頭を使うけど使わない、面白かったです。呼吸が楽に出来るようになると自然に身体が柔らかくなるという驚きの発見もありました。自然な呼吸で楽しんで歌えるようになりたいです。
Tさん (音大生・声楽) 20代
昨日のお教室後と先程も歌ってみました。姿勢が改善されて首の位置が変わったのか、最近は口の開き方に注意して歌っているのですが、アゴの開き方がいつもの練習よりスムーズに良い方向に動きました。
Aさん (声優勉強中) 20代
今日はありがとうございました。
心臓や胸の痛みを気にしすぎて、背中まで肩こりや筋肉痛のようになっていたんですが今背中がとっても楽になりました。呼吸も苦しかった時に、どうにか息を吸おうとして鎖骨の辺りが痛くなったりしていたのですが、それも今はなく酸素がきちんと吸える感覚がしています。久しぶりに歌が歌いたいなとも思いました。無理はしないように、今できることを楽しめればなと思います。今日は本当にありがとうございました。
2日後の感想:痛みが軽くなったおかげで久しぶりに2日ほどぐっすり眠ってしまいました...。
Wさん (会社員) 30代
フェルデンクライス・レッスンありがとうございました😊
その後、からだの力みを少しずつ抜けるようになり、気持ち的にも余裕が出て、焦ることが少なくなって来て気が楽になってきた気がします。これからも参加したいので、よろしくお願いいたします。
Kさん (ピアニスト) 50代
本番直前数日間集中力を持って弾き続け頭も体も疲れ、難しく弾きにくい曲に四苦八苦、頭(脳)もパンパンでした。でもフェルデンのレッスンで背中も楽になり頭もスッキリして本当に助かりました。あの後、そうだ!難しいところこそ歌いながら弾けるように練習!…と思い出して💡まずはゆっくりから始めたら、速いテンポで弾けるようになりました!
今までいろんな練習方法で試しても行き詰まっていた脳がフェルデンでスッキリして、忘れていた大事なことを思い出せたのだと思います。本番は完璧とはいきませんが、最後までいい緊張感と集中力を保ちながら演奏できました。行きの電車の座席で、骨盤の動きとシーソー呼吸をし、本番の合間に肩甲骨を動かしたり等々…フェルデンのおかげです。
My体験談 Sさんの個人レッスン(FI*)を続けて 青木美稚子 2021年8月
昨年(2020年)9月のある日、フェルデンクライスの個人レッスンを受けたいという高齢の女性からの電話がありました。Sさんは私と高校が同窓の78歳の方で、私がメソッドの指導者であることを同窓会誌で知ったそうです。脳梗塞を患い、その再発防止と機能回復、そして慢性的に痛みのある左ひざの改善が目的でした。ご友人から脳梗塞のリハビリにフェルデンクライスが一番有効だったと聞いたそうです。
都バス1本で来られる地の利もあり、9月30日から個人レッスンが始まりました。バス停から杖をつき、痛みのある膝をかばうように歩いて来られました。最初の数回は2~3週間おきくらいに行いました。施術ベッドに寝たり、椅子に座ったり、ゆっくり小さく動いていただき、私が肩や肩甲骨、首、腕、足部や脚、体のいろいろな部位にやさしく働きかけていきました。3回目いらした時、杖をついていなかったので、お尋ねすると、不思議そうなお顔を?すっかり杖は不用になっていたのです。
このメソッドの個人レッスンは施術や治療ではなく、体の動きを使いながら脳にアクセスし学びを促し、新しい機能のオプションを見つけてゆくもの。痛みや動きにくい部位にフォーカスせず、むしろ遠位から動かし始め、少しずつ体全体をオーガナイズしてゆきます。FI(Functional Integration 「機能の統合」)と呼ばれ、先生と生徒がダンスを踊るように、神経系を介して繋がれながら、二人で生徒さんの動きの可能性を探してゆくもの。(ですので私も改善されます)。
2ヶ月後には骨盤や肩甲骨の動きが改善され、固まっていた部分が少しずつ溶けていきました。一つ気になっていたのは呼吸。お腹が動かず、浅い胸式呼吸でした。夜は器具をつけないと眠れないのだとか。フェルデンクライスの呼吸のレッスンを続け、次第にお腹で呼吸ができるようになり、鼻の詰まりも改善。声も高くなり、言葉もはっきりと。Sさんも手応えを感じられたようで、毎週続けたいとお申し出がありました。
そして、ちょうど一年が経ち、その改善に驚かされています。鼻や呼吸の改善で、レッスンの後半はぐっすりと眠ってしまわれることもしばしば。私も、私の手を通して、Sさんのお体をより感じられるようになり、予期せぬ動きが生まれたり、毎回驚きと発見が続いています。
レッスン後お茶をしながら、大好きな読書や音楽のお話を楽しそうにされるSさんの明るい声を聴くことが、私の楽しみにもなっています。帰り道の後ろ姿は感動的です。腰や肩甲骨が絶妙なバランスで連動して動き、ゆったりと大地を踏んでゆくような安定した優雅!な歩み。
Sさんに、人間と人間を結ぶフェルデンクライスの神髄を教えていただけたように感じています。その深い人間研究と理念、そしてアメージングな実践法に驚く毎日です。
※ ATMは、[Awareness through the movement] のことで,、意味は「動きによる気づき」。グループレッスンで行います。
FIは、[Functional integration ]のことで、意味は「機能の統合」。先生と生徒が1対1で行います。